スタッフ日記

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家主の威厳

 店舗付住宅の借主が家賃の滞納を繰り返す。当初は家賃が送れる場合は遅れる旨と入金日の連絡をくれたのだがその内それも無くなり、催告すると「居酒屋の売上が芳しくない、子供の入学でお金が無くなった、両親に借りて支払います、バイトを始めたのでその給料でなんとか・・・」などなどさまざまな理由をつけるのだが結局未入金が増えていく。
 私は家主にその都度説明し、理解を求めていたのだが家賃が入らないので家主も不信になるのは当然である。家主は他に多くの物件をお持ちになっており高齢になられたので弊社に管理を委託された。管理当初から滞納があり、契約も同居人が連帯保証人と普通では「ちょっとそれでは・・・」という内容であった。
 家主の「おばあ様」は心の広い、話の分かる方で人付き合いが良く、やさしく尊敬する人柄である。「ちょっと、店行こか。久しぶりに借家も見たいし、借主にも話ししとかな・・・。」との事で私も同行する。私の力不足でふがいない事である。家主の出陣である。
 「ちょっとええか。店に客も入ってないのになんでテレビ点けてんの。電気代かかるやろ。」と店に入るなりおばあ様は言う。借主はいきなりの家主登場でびっくりしているところの先制パンチである。
 「ちょっと足痛いから座らしてもらいます。ここええか。」とおばあ様はソファに腰を下ろした。「家賃ちっとも払ってないそうで色々考えたんやけど出て行ってくださいな。」とおばあ様ははっきりした声できっぱりと言う。「それはちょっと店の改装に費用がかかってます。それにお客がついて売り上げも上がってきましたのでこれからは必ずお支払させていただきます。」と借主は頭を下げた。「あかん。滞納のお金はいらん。ややこしいからすぐ店をたたんで出て行け!」とおばあ様は声を荒げた。横にいた私もその声に圧倒され声が出ない。その言葉に借主は床に頭を付き土下座した。
 「すいません。今回だけは許してください。」と嘆願する。「あきません。」おばあ様は土下座にたじろぐ事なくきっぱり返す。「毎月多めに入金する事を約速します。今回だけは許してください。」土下座しながら涙声で言う。「あかん。出ていきなはれ。」家主の意思は固い。折り合いが付かない。堂々巡りが続く。借主は頭を床につけ、ずっと「すいません、すいません・・・」謝っている。
 「本人もかなり反省してますし、すぐに出て行くのは無理そうです。返済計画を立てさせ、遅延した場合は即刻退去する念書をもらいますので今回は穏便に。私からもお願いします・・・。」と私はかすれた声でおばあ様に言う。
 沈黙があり、「しゃあないな。あんたがそう言うなら・・・。」借主は「ありがとうございます。これからはきっちりと返済します!」と頭を上げた。 「健康に気をつけなさい。商売がんばり。」とおばあ様はにこやかに借主に声をかけた。
 「督促はな、押したり引いたりや・・・。」「大変勉強になりました。」と私はおばあ様に頭を下げた。

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